「言ってもいないことを言われた」「やってもいないことをやったと噂されている」——そんな経験、実はすごく身近に起こっています。職場の休憩室、学校のグループLINE、匿名掲示板やSNS。ありもしない噂って、思っている以上にあっという間に広がってしまうんですよね。
でも、いざ「これって名誉毀損なの?」と聞かれると、意外とはっきり答えられる人は少ないもの。侮辱罪との違いも曖昧だし、訴えるとなったら何をどう準備すればいいのか分からない、という方がほとんどだと思います。
この記事では、ありもしない噂を流されたときに名誉毀損が成立する条件から、証拠の残し方、職場や学校での初期対応、弁護士に相談するタイミングや費用感、実際の裁判例まで、順番にわかりやすく整理していきます。今まさに噂に悩まされている方も、将来のために知識を蓄えておきたい方も、ぜひ最後まで読んでみてください。
ありもしない噂を流されたときの名誉毀損とは?成立要件と事実のポイント
まず大前提として、「ありもしない噂」だからといって、それがすべて名誉毀損になるわけではありません。法律上の名誉毀損には、きちんとした成立要件があります。ここを理解しておくと、自分の状況が該当するかどうかを冷静に判断しやすくなります。
公然性・摘示・毀損の3要件を具体的に解説
刑法230条に定められている名誉毀損罪は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立するとされています。ポイントは次の3つの要件がすべて揃っているかどうかです。
| 要件 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 公然性 | 不特定または多数の人が知り得る状態にあること | SNSへの投稿、掲示板への書き込み、大人数がいる場での発言など |
| 事実の摘示 | 社会的評価を下げるような具体的な事実を示すこと(真偽は問わない) | 「〇〇さんは会社の金を使い込んでいる」など具体的な内容 |
| 名誉の毀損 | 社会的評価を低下させるおそれのある状態を発生させること(実際に評価が下がったことまでは不要) | 発言や投稿によって信用・評判に悪影響が及ぶ可能性がある状態 |
ここで意外と誤解されやすいのが、「事実」という言葉の意味です。法律上の「事実」は、それが真実かどうかを問いません。つまり、完全に嘘の噂であっても、具体的な内容を示して他人の評価を下げるものであれば、名誉毀損に該当する可能性があるんです。「ありもしない噂」だからこそ、むしろ名誉毀損として問題になりやすいとも言えます。
一方で、「公然性」については、不特定または多数のどちらか一方を満たせば認められるとされています。たとえば少人数であっても、そこから広まる可能性がある状況なら公然性が認められるケースもあるので、「少人数の場だから大丈夫」と安心はできません。
侮辱罪・風説の流布・刑法との違いをわかりやすく解説
名誉毀損とよく混同されがちなのが「侮辱罪」と「風説の流布」です。それぞれの違いを整理しておきましょう。
| 罪名 | 根拠法 | 事実の摘示 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 名誉毀損罪 | 刑法230条 | 必要 | 具体的事実を示して社会的評価を下げる |
| 侮辱罪 | 刑法231条 | 不要 | 「バカ」「クズ」など評価を下げる抽象的な悪口 |
| 信用毀損罪・業務妨害罪(風説の流布) | 刑法233条 | 虚偽の風説が対象 | 虚偽の噂を流して人の信用や業務を妨害する行為 |
名誉毀損と侮辱罪の一番の違いは「事実の摘示があるかどうか」です。「あの人、浮気してるらしいよ」のように具体的な内容を示せば名誉毀損、「あいつマジで最低」のように抽象的な悪口なら侮辱罪、という区別になります。
また、風説の流布(信用毀損罪・業務妨害罪)は、刑法233条に規定されているもので、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する」とされています。これは個人の名誉というより、事業の信用や業務運営に対する妨害を対象とする点が名誉毀損と異なります。取引先や競合に「あの会社は経営が危ない」といった嘘の噂を流された場合は、こちらの適用も検討する余地があります。
なお、侮辱罪は2022年7月の法改正で厳罰化され、拘禁刑(懲役刑)が新設されました。「事実を示していないから軽い」というイメージは、以前より薄れてきていると言えます。
企業・学校・職場などケース別に該当するか判断するコツ
名誉毀損は個人だけでなく、会社などの法人に対しても成立します。ケースごとに考え方を整理してみましょう。
- 職場:上司や同僚に「あの人は前の会社で不正をしていた」と嘘の噂を流された場合、社内という限定された場でも、複数人に伝わる状況なら公然性が認められる可能性があります。
- 学校:クラスやグループLINEで「〇〇さんは万引きをした」といった噂が広がるケースは、生徒間という不特定多数への伝播が想定され、名誉毀損の要件を満たしやすい場面です。
- 企業間:競合他社が「その会社は法令違反をしている」といった虚偽情報を取引先に流した場合、名誉毀損に加えて風説の流布や不正競争防止法上の問題も絡んでくることがあります。
いずれの場面でも共通するのは、「具体的な事実の摘示があるか」「不特定または多数に伝わる状況か」という2点をまず確認することです。この時点で判断に迷う場合は、後述する弁護士への相談を早めに検討するのがおすすめです。
まずは証拠を残す!書き込み・メール・LINEでの証明ガイド
噂を流された、と感じたときに一番大切なのは、感情的に動く前にまず証拠を残すことです。証拠がなければ、後から「言った・言わない」の水掛け論になってしまい、対応が難しくなります。
インターネット上の投稿者特定と削除請求のステップ
SNSや匿名掲示板に書き込まれた場合、対応の流れは大きく次のようになります。
- 該当する投稿・ページのスクリーンショットを保存する(URL、投稿日時、アカウント名がわかる形で)
- サイト運営者(コンテンツプロバイダ)に対して削除請求を行う
- 必要であれば発信者情報開示請求を行い、投稿者のIPアドレスなどを特定する
- 経由プロバイダ(通信会社)に対してさらに開示請求を行い、投稿者の氏名・住所を特定する
発信者情報開示請求は、サイト運営者と通信会社という2段階の手続きを踏むのが一般的で、時間も費用もかかります。弁護士に依頼する場合の着手金は、両方合わせて30万〜70万円程度が目安とされています。自分で手続きする場合は、申立手数料などの実費で数千円〜1万円程度に抑えられますが、手続きが複雑なため、確実に進めたい場合は弁護士への依頼が現実的な選択肢になります。
削除請求だけであれば、任意の交渉で1投稿あたり5万5000円程度から対応してもらえる事務所もあります。まずは削除だけを急ぎたいのか、投稿者の特定まで進めたいのかによって、依頼する内容を整理しておくとスムーズです。
噂を流す人の発言録音と精神的被害の記録方法
口頭で噂を流された場合、記録が残りにくいのが難点です。次のような方法で証拠化しておきましょう。
- 会話の録音(スマートフォンの録音機能で十分。日時・場所・発言内容がわかるようにメモも残す)
- 噂を聞いた人からの証言(誰が、いつ、どこで、何を聞いたかをできるだけ詳しく記録してもらう)
- 自分自身の被害状況の記録(不眠、体調不良、通院履歴など、精神的被害を裏付ける記録)
- LINEやメールでの言及がある場合はスクリーンショットを保存
精神的被害の記録は、後に慰謝料を請求する際の重要な根拠になります。「つらかった」という感覚だけでなく、通院記録や診断書といった客観的な資料があると、損害の程度を主張しやすくなります。
公然性を裏付けるスクリーンショット&証言の集め方
名誉毀損の成立には「公然性」の証明が必要です。これを裏付けるために意識したいポイントをまとめます。
| 証拠の種類 | 具体的な残し方 | 証明できること |
|---|---|---|
| スクリーンショット | 投稿日時・URL・アカウント名が写るように撮影 | 誰が、いつ、どのような内容を発信したか |
| 証言・供述書 | 噂を聞いた人に、聞いた日時・場所・内容を書面化してもらう | 不特定多数に伝わっていた事実(公然性) |
| 会話の録音 | 発言そのものを音声で記録 | 発言内容とその摘示があったこと |
| 診断書・通院記録 | 病院での診断内容や通院日を記録 | 精神的被害の程度 |
証拠は「量より質」がとても大事です。ばらばらに撮ったスクリーンショットではなく、日付や経緯がひとつのストーリーとして分かるように整理しておくと、後の相談や交渉がぐっとスムーズになります。
早めの対処法:職場ハラスメントや学校で悪口を言いふらす場合の対応
証拠を残すのと同時進行で、噂の拡大を防ぐための初期対応も進めておきたいところです。特に職場や学校のような、継続的な関係が続く場では、早めの一手が被害の広がりを抑えるカギになります。
悪い噂を流される前に上司と企業法務へ共有
職場で悪い噂が流れ始めたと感じたら、なるべく早い段階で上司や人事、企業法務に相談することをおすすめします。「大げさにしたくない」という気持ちから抱え込んでしまう方も多いのですが、噂は放置すればするほど広がりやすくなります。
社内への共有では、次の点を整理して伝えると話がスムーズです。
- いつ、どこで、誰が、どのような噂を流したか(可能な範囲で)
- 業務や人間関係にどのような影響が出ているか
- 会社としてどのような対応を望むか(事実確認、注意、就業規則に基づく措置など)
企業側にも、社内の名誉毀損的な言動に対して適切に対処する責任があります。特に人事評価や配置に影響が出ている場合は、ハラスメント案件として社内規程に基づく調査対象になることもあります。
病気などデリケート情報の噂話はプライバシー侵害も併発
噂の内容が病気や既往症、家族関係、経済状況といったデリケートな情報に関わる場合、名誉毀損に加えてプライバシー侵害も同時に問題になることがあります。名誉毀損は「社会的評価の低下」を問題にしますが、プライバシー侵害は「本人が公開を望まない私生活上の情報が広まったこと」そのものを問題にする点が異なります。
たとえば「〇〇さんは持病を隠して働いている」といった噂が流れた場合、それが事実であっても、本人の同意なく広められたのであればプライバシー侵害として損害賠償の対象になる可能性があります。名誉毀損の主張と併せて、プライバシー侵害の観点からも整理しておくと、より的確な対応につながります。
トラブル拡大を防ぐ社内ガイドラインと研修事例
企業としては、噂やハラスメントの拡大を未然に防ぐ仕組みづくりも重要です。具体的には、次のような取り組みが挙げられます。
- ハラスメント防止規程の整備と、相談窓口の明確化
- 管理職向けの研修で、噂やゴシップが職場に与える影響を共有する
- 匿名の相談窓口を設け、初期段階で問題を把握できる体制をつくる
- 事案発生時の対応フロー(聞き取り、事実確認、注意・指導、再発防止策)を事前に定めておく
このような体制があると、社員が「相談してもどうにもならない」と諦めてしまうことを防ぎ、結果的にトラブルの早期発見・早期対応につながります。
名誉毀損罪で訴える?民事・刑事の違いと可能性を整理
「訴える」という言葉には、実は刑事と民事という2つの異なる手続きが含まれています。それぞれ目的も手続きも異なるので、まずはこの違いを理解しておきましょう。
| 項目 | 刑事(名誉毀損罪) | 民事(損害賠償請求) |
|---|---|---|
| 目的 | 加害者に刑罰を科す | 被害の金銭的な回復(慰謝料など) |
| 手続きの開始者 | 検察官(被害者は告訴のみ可能) | 被害者本人が訴訟を提起 |
| 主な結果 | 懲役・禁錮・罰金 | 損害賠償金の支払い |
| 時効・期限 | 公訴時効3年、告訴期間は犯人を知った日から6か月 | 一般的な不法行為の消滅時効に準ずる |
刑事告訴・逮捕までの流れと犯罪構成要件
名誉毀損罪は親告罪であり、被害者が告訴しなければ検察官は起訴できません。告訴には期限があり、「犯人を知った日から6か月」を過ぎると告訴できなくなる点に注意が必要です。ネット上の匿名の投稿の場合、発信者情報開示請求によって投稿者が判明した時点から6か月というのが実務上の考え方になります。
また、公訴時効は犯罪行為が終わったときから3年です。つまり、告訴期間(6か月)と公訴時効(3年)の両方をクリアしている必要があるということです。
刑事告訴の一般的な流れは次のとおりです。
- 証拠を整理し、告訴状を作成する
- 警察または検察に告訴状を提出する
- 捜査機関による捜査(投稿者の特定調査、関係者への聞き取りなど)
- 検察官による起訴・不起訴の判断
- 起訴された場合は刑事裁判へ
なお、名誉毀損罪が成立するには、故意の存在も要件のひとつとされています。「知らずに拡散してしまった」というケースでは、故意性の判断が争点になることもあります。
損害賠償請求と慰謝料の相場・責任範囲を解説
民事上の損害賠償請求では、慰謝料の金額に明確な基準はなく、事案ごとの事情によって大きく異なります。相場感としては、以下のような目安が示されています。
| ケース | 慰謝料の目安 | 傾向 |
|---|---|---|
| 一般的な名誉毀損(従来の目安) | 10万円〜100万円程度 | 従来から言われている相場感 |
| ネット上の名誉毀損(近年) | 数十万円〜100万円程度、被害が重大な場合はさらに高額になることも | 被害の重大化を反映した相場 |
慰謝料の算定には、噂の内容の悪質性、拡散の範囲、被害者が受けた実害(休職、退職、通院など)、加害者の反省の態度などが総合的に考慮されます。単純に「噂を流されたから即座に100万円」というわけではなく、被害の実態を丁寧に立証することが金額に直結します。
名誉毀損で訴えると脅されたときの対応とリスク
逆に、「名誉毀損で訴える」と相手から脅されるケースもあります。これは、事実を指摘したにすぎない場合や、公共の利害に関する内容を発信した場合には、必ずしも名誉毀損が成立するとは限りません。刑法230条の2では、公共の利害に関する事実であり、専ら公益を図る目的で行われ、その事実が真実であると証明された場合には処罰しないという規定(違法性阻却事由)があります。
「訴える」と言われて慌てて対応を誤ると、不要に不利な立場に置かれることもあります。まずは自分の発言・投稿が事実に基づいているか、公益性があるかを整理し、早めに弁護士へ相談することが安全な対処につながります。
弁護士に依頼するタイミングと費用の目安
「これくらいで弁護士に相談していいのかな」と迷う方も多いのですが、証拠が新鮮なうちに相談したほうが、その後の対応の選択肢が広がります。
初回無料法律相談で確認すべきポイント
多くの法律事務所では初回無料相談を実施しています。相談時には、次のポイントを確認しておくと有意義な時間になります。
- 自分のケースが名誉毀損の要件(公然性・摘示・毀損)を満たしているか
- 削除請求、開示請求、損害賠償請求のうち、どの手続きから着手すべきか
- 想定される費用の総額と内訳(着手金・報酬金・実費)
- 解決までにかかる想定期間
- 弁護士費用特約が使えるかどうか
相談前には、これまで残してきた証拠(スクリーンショット、録音、診断書など)を時系列でまとめておくと、相談時間を有効に使えます。
公益と利害を踏まえた交渉術と時間管理
名誉毀損の対応では、感情的な対立をこじらせず、公益性や事実の有無を冷静に踏まえた交渉が重要になります。弁護士に依頼するメリットは、この「冷静な線引き」を第三者の立場から進めてもらえることです。
また、ネット上の投稿は時間が経つほど拡散し、発信者情報の保存期間(ログの保存期間)も限られています。証拠保全や開示請求は、時間との勝負になる場面が多いため、早期の着手が結果を左右します。
弁護士費用を抑える特約活用と企業負担の可否
弁護士費用は決して安くはありませんが、負担を軽減する方法もあります。手続き別の費用感を整理すると、次のようになります。
| 手続き | 着手金の目安 | 報酬金の目安 |
|---|---|---|
| 任意の削除請求 | 3万〜5万5000円程度 | 5万円〜 |
| 削除の仮処分申立 | 20万〜33万円程度 | 20万〜33万円程度 |
| 発信者情報開示請求(1手続あたり) | 20万〜33万円程度 | 別途報酬金が発生する場合あり |
| 損害賠償請求(交渉) | 10万円〜 | 経済的利益の10〜17%程度 |
弁護士費用特約(自動車保険や火災保険などに付帯していることが多い)を使えば、こうした費用の一部または全部を保険でカバーできる場合があります。契約している保険に特約が付いているか、一度確認してみることをおすすめします。
また、職場でのトラブルが原因の場合は、会社の企業法務が対応費用を一部負担してくれるケースもあります。特に、社内の人間関係が原因で発生した名誉毀損トラブルであれば、まずは会社に相談し、企業側の対応可能性を確認してみるとよいでしょう。
名誉・評価が低下した後の回復策とインターネット対応
名誉毀損の被害に遭った後は、法的措置と並行して「評価を取り戻すための対応」も欠かせません。特にインターネット上の情報は、放置すると長く残り続けてしまいます。
検索結果・SNS投稿の削除請求とSEO対処
検索結果に噂の内容が表示されてしまっている場合、検索エンジン運営者に対して検索結果の削除請求を行うことも可能です。あわせて、SNSの投稿自体の削除請求も並行して進めるのが基本的な流れになります。
削除請求の手段としては、以下の方法が考えられます。
- サイトやSNSプラットフォームのガイドラインに基づく通報・削除申請
- 弁護士による任意の削除請求(送信防止措置依頼)
- 裁判所への削除仮処分の申立て
検索結果に表示され続けてしまう場合、ポジティブな情報発信によって検索結果の見え方を調整する、いわゆる逆SEO的な対応を組み合わせる方法もあります。ただし、これは根本的な解決策ではなく、削除請求や法的措置と組み合わせて検討するのが望ましいです。
ブログやSNSでの訂正投稿と公共目的への配慮
自分自身の名誉を回復するために、事実と異なる噂に対して訂正情報を発信したいと考える方もいるでしょう。この場合、次の点に配慮する必要があります。
- 相手を過度に攻撃する内容にしない(新たな名誉毀損や侮辱のリスクを避ける)
- 事実に基づいた冷静な説明にとどめる
- 感情的な表現は避け、必要であれば弁護士に文面をチェックしてもらう
訂正投稿は、あくまで自分の評価を正確に伝えるためのものであり、相手への報復や攻撃にならないよう注意が必要です。表現を誤ると、逆に自分が名誉毀損や侮辱で訴えられるリスクも生まれます。
企業法務が行うモニタリングと再発防止行為
企業として名誉毀損リスクに向き合う場合、次のような体制づくりが重要になります。
- SNSや掲示板での自社・従業員に関する言及を定期的にモニタリングする体制
- 問題発見時にすぐ削除請求や法的対応に着手できる社内フロー
- 再発防止のための社内規程の見直しと従業員教育
モニタリングは自社で行うほか、専門のモニタリングサービスや弁護士事務所に依頼する方法もあります。早期発見ができれば、拡散前に対応できる可能性が高まります。
実際の裁判・和解事例で見る損害賠償額の相場
実際の裁判例を見ると、どのような事情が損害賠償額に影響するのかが具体的にイメージしやすくなります。
インターネット掲示板に書き込まれた事実無根の噂
インターネット上の名誉権侵害に関する調査では、電子掲示板への書き込みに関する事案で、100万円の賠償が認められた例が確認されています。掲示板での書き込みは不特定多数に拡散しやすいため、被害の程度が大きく評価される傾向にあります。
近所トラブルで病気デマを摘示したケース
近所付き合いの中で、病気に関するデマが流された場合、名誉毀損とプライバシー侵害が同時に問題になることがあります。こうしたケースでは、地域社会という限られた範囲でも「不特定多数が知り得る状態」として公然性が認められることがあり、慰謝料の算定にあたっては精神的苦痛の大きさが重視される傾向があります。
企業間の風説の流布で営業損失が発生した具体的数字
企業間トラブルでは、名誉毀損だけでなく、刑法233条の信用毀損罪・業務妨害罪(風説の流布)が問題になることもあります。取引先や競合が虚偽の情報を流布したことで営業上の損失が発生した場合、民法709条に基づく損害賠償に加え、不正競争防止法上の請求が可能になるケースもあります。営業損失の算定には、実際の売上減少データや取引先への影響調査など、具体的な数字による立証が求められる点が特徴です。
このように、名誉毀損の慰謝料相場は事案ごとに大きく異なり、「掲示板での拡散度」「デマの内容の深刻さ」「実際の経済的損失の有無」といった要素が金額を左右します。従来は10万円〜100万円程度が目安とされてきましたが、ネットの普及により被害が重大化するケースも増え、金額が上振れする傾向も見られます。
チェックリスト:あなたの状況が名誉毀損に該当するか
ここまでの内容を踏まえて、自分の状況をセルフチェックできるリストを用意しました。当てはまる項目が多いほど、名誉毀損に該当する可能性が高いと考えられます。
目的・公然性・摘示がそろうかセルフ診断
- 不特定または多数の人が知り得る状況で噂が広まっているか(公然性)
- 「〇〇をした」「〇〇である」といった具体的な内容が示されているか(事実の摘示)
- その内容によって、自分の評価・信用が下がる可能性があるか(名誉の毀損)
- 発言や投稿をした人に、意図的に広める意思があったか(故意)
- 公共性や公益目的が認められるような内容ではないか(違法性阻却事由の有無)
これらすべてに当てはまる場合、名誉毀損が成立する可能性は高いと言えます。一方、事実の摘示がなく単なる悪口の場合は、侮辱罪に該当する可能性を検討する流れになります。
精神的被害と社会的評価低下を数値化する方法
損害賠償を請求する場合、被害の大きさを可能な範囲で「見える形」にしておくことが有効です。
| 被害の種類 | 数値化・記録の方法 |
|---|---|
| 精神的被害 | 通院記録、診断書、服薬記録、心理カウンセリングの利用記録 |
| 社会的評価の低下 | 取引先からの契約見直し、職場での評価変化、周囲の対応の変化に関するメモ |
| 経済的損失 | 売上減少データ、契約解除の通知、退職・休職による収入減の記録 |
数字や記録として残しておくことで、交渉や裁判の場でも説得力のある主張につながります。
刑事・民事どちらで動くべきか判断フロー
最後に、刑事と民事どちらのアプローチを取るべきか、簡単な判断フローを示します。
- 相手に刑事罰を受けてほしいか、金銭的な回復を重視したいかを整理する
- 告訴期間(犯人を知った日から6か月)が残っているかを確認する
- 投稿者が特定できているか、開示請求から始める必要があるかを確認する
- 弁護士に相談し、証拠の強さと見込まれる結果を踏まえて方針を決める
多くのケースでは、刑事告訴と民事の損害賠償請求は並行して進めることも可能です。どちらか一方に絞る必要はなく、状況に応じて両方の可能性を検討するのが現実的な進め方です。
まとめ:誹謗中傷・名誉毀損へのベストな対応手順
ありもしない噂を流されたときは、まず落ち着いて証拠を残し、状況を整理することが何より大切です。感情的に反応してしまうと、証拠が不十分なまま時間だけが過ぎてしまい、告訴期間や開示請求のタイミングを逃してしまうこともあります。
今すぐできる3ステップ対応フロー
- 証拠を残す:スクリーンショット、録音、証言、診断書などをできるだけ具体的に保存する
- 状況を共有する:職場や学校であれば上司・担当部署に、ネット上であれば早めに弁護士に相談する
- 方針を決める:削除請求・開示請求・損害賠償請求・刑事告訴のうち、優先すべき手段を弁護士と一緒に決める
この3ステップを踏むことで、感情に振り回されず、着実に問題解決へ向かうことができます。
FAQ:名誉毀損に関する無料法律相談の活用法
Q. 無料相談ではどこまで聞いていいのですか?
A. 名誉毀損に該当するかどうかの見立て、必要な証拠、費用の見積もり、解決までの想定期間など、基本的な内容はほとんどの事務所で無料相談の範囲内で確認できます。
Q. 相談時に持っていくべきものは?
A. スクリーンショット、録音データ、診断書、経緯をまとめたメモなど、時系列で整理した資料があると相談がスムーズです。
Q. 弁護士費用が心配で相談をためらっています。
A. 弁護士費用特約が使える場合は自己負担を大幅に抑えられます。契約している保険を確認したうえで、まずは無料相談で見積もりを確認してみるのがおすすめです。
Q. 相談してもすぐに解決するとは限らないのでしょうか?
A. 開示請求や裁判手続きには一定の時間がかかります。ただし、早く動き始めるほど選択肢が広がるため、迷っている時間があるなら早めの相談が結果的に近道になることが多いです。
ありもしない噂に振り回されるのは本当につらいことですが、正しい知識と落ち着いた対応があれば、状況を整理して前に進むことができます。まずは証拠を残すこと、そして一人で抱え込まずに専門家へ相談することを、ぜひ覚えておいてください。
