SNSやネットの掲示板で「バカ」「クズ」といった悪口を書かれて、悔しい思いをした経験はありませんか。最近はネット上の誹謗中傷が社会問題になっていて、2022年には侮辱罪の罰則が強化されるほど、法律も対応を進めています。とはいえ「侮辱罪で訴えたいけど、何をすればいいのかわからない」という方がほとんどだと思います。
この記事では、侮辱罪で訴えるために必要な証拠の集め方から、告訴や削除請求の具体的な進め方、さらには訴えられてしまった側の対応まで、順番にわかりやすく解説していきます。ご自身の状況に近い部分から読んでいただいても大丈夫です。それでは早速見ていきましょう。
侮辱罪で訴える前に押さえる基礎知識|成立要件と名誉毀損罪との違い
まずは「そもそも侮辱罪ってどんな罪なの?」というところから整理していきましょう。感覚的に「傷つけられた=すぐ訴えられる」わけではなく、法律上のいくつかの要件を満たす必要があります。
刑法231条を解説:侮辱罪の要件と成立のポイント
侮辱罪は刑法231条に定められている犯罪で、条文には「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」とあります。ちょっと堅い言い回しですが、噛み砕くと次の3つの要件を満たすと成立する、というイメージです。
- 公然性:不特定または多数の人が知りうる状態であること
- 侮辱行為:具体的な事実を示さずに、相手の人格や能力を貶めるような言動をすること
- 対象の特定性:発言の相手が誰なのか特定できること(匿名アカウントでも文脈から推知できればOK)
ここで気をつけたいのが、法定刑の変化です。2022年7月7日の法改正で、それまで「拘留または科料」だけだった侮辱罪に「1年以下の拘禁刑(当時は懲役・禁錮)または30万円以下の罰金」が追加され、厳罰化されました。ネット上の誹謗中傷が深刻化したことが背景にあります。
名誉毀損罪との違いと判断基準|社会的評価の棄損か悪口か
侮辱罪とセットで語られることが多いのが「名誉毀損罪」です。両者の最大の違いは「事実の摘示があるかどうか」という点にあります。
具体的な事実(本当かどうかは関係ありません)を示して相手の評価を下げれば名誉毀損罪、事実を示さず単に「無能」「クズ」のような抽象的な悪口で相手を貶めれば侮辱罪、という整理です。表で比較してみましょう。
| 項目 | 名誉毀損罪(刑法230条) | 侮辱罪(刑法231条) |
|---|---|---|
| 事実の摘示 | あり(真偽は問わない) | なし(抽象的な悪口・罵倒) |
| 法定刑 | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 | 1年以下の拘禁刑・30万円以下の罰金・拘留・科料 |
| 公訴時効 | 3年 | 3年(2022年改正で1年から延長) |
| 親告罪 | はい | はい |
たとえば「あの人は不倫している」と書けば名誉毀損罪、「あの人はバカだ」と書けば侮辱罪、というのが典型的な分かれ方です。実際の投稿は事実の摘示と悪口が混在しているケースも多く、最終的な判断は個別の文脈や表現方法を見て判断されます。
ネット誹謗中傷が侮辱になるケースとならないケース
ネットの書き込みは「公然性」の要件を満たしやすい一方で、すべての悪口が犯罪になるわけではありません。判断のポイントを整理すると以下のようになります。
- 侮辱になりやすいケース:不特定多数が見られるSNSやまとめサイトのコメント欄で、名前や特定できる情報を挙げて罵倒した場合
- 侮辱になりにくいケース:DMや1対1のチャットのように第三者が見られない場でのやりとり、単なる意見や感想の範囲にとどまる批判
「公然と」の要件は、その場に実際に多数の人がいたかどうかではなく、不特定または多数の人が認識できる状態だったかどうかで判断されます。ネットの投稿は基本的にこの公然性を満たしやすいと考えられています。
親告罪ゆえの注意点:被害者の告訴・申し立てが必要
侮辱罪は「親告罪」です。つまり被害者本人(またはその代理人)が告訴しないと、検察官は起訴することができません。警察に相談しても、被害者が告訴の意思を示さなければ刑事手続きは進みません。
さらに注意したいのが「告訴期間」です。親告罪の告訴は、犯人を知った日から6か月を過ぎるとできなくなります(刑事訴訟法235条1項)。ネット上の誹謗中傷では、発信者情報開示請求で投稿者が判明した時点から6か月とされることが多いので、投稿者の特定を後回しにしすぎると告訴のチャンスを失うおそれがあります。
企業法務が知るべきリスク管理と社内対応
企業の立場で見ると、侮辱罪は個人間のトラブルだけでなく、社員のSNS投稿や口コミサイトへの書き込みが原因で会社の信用が傷つくリスクにも直結します。企業として押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 社員のSNS利用ガイドラインを整備し、誹謗中傷的な発言のリスクを周知する
- 自社や役員・従業員に対する誹謗中傷を見つけた場合、早期にスクリーンショットで証拠を保全する
- 法務部門または顧問弁護士と連携し、削除請求や発信者情報開示請求の可否を速やかに検討する
- レビューサイトや口コミへの過剰な反応は、逆にレピュテーションリスクを高めることもあるため慎重に判断する
企業が当事者となる場合は、個人の慰謝料相場よりも高い金額が認定される傾向があり、法人の名誉毀損では50万円から100万円超のケースも報告されています。早期の証拠保全と専門家への相談が、リスクを最小限に抑えるカギになります。
侮辱罪にあたる言葉・行為の具体例|「お前はバカ」などの悪口
「これは侮辱罪になるの?」と悩んだときの参考になるよう、具体的な言葉の例や実際の判断基準を見ていきましょう。
侮辱に該当する発言例10選:「お前」「ブス」など
事実の摘示を伴わない、人格を貶める表現が侮辱罪の対象になりやすいとされています。よく挙げられる表現の傾向は次のようなものです。
- 「バカ」「アホ」「無能」といった能力を否定する言葉
- 「クズ」「ゴミ」「消えろ」といった存在自体を否定する言葉
- 容姿を揶揄する表現(「ブス」「デブ」など)
- 「死ね」「殺す」など脅迫的なニュアンスを含む場合は、侮辱罪だけでなく脅迫罪にも触れる可能性がある
ただし、これらの言葉が使われたからといって必ず犯罪になるとは限りません。文脈や表現の程度、対象が特定できるかどうかなど、個別の事情を踏まえて判断されます。単発の軽い悪口よりも、繰り返しの投稿や実名・顔写真とセットになった投稿のほうが、違法性が認められやすい傾向があります。
政治家・芸能人へのSNS投稿が刑事事件になった判例
公人であっても、名誉感情の侵害が「受忍限度」を超えると判断されれば法的責任が問われます。たとえば大阪高裁令和5年5月30日判決では、国会議員のSNSでの発言・投稿について、受忍限度を超える名誉感情侵害が認められ、賠償が命じられた事例が報告されています。
政治家や芸能人は一般人より批判を受けやすい立場にあるとはいえ、批判の範囲を超えた人格攻撃は許されるものではない、という考え方が裁判所の判断からも見て取れます。
掲示板・コメント欄での書き込みが犯罪と判断された事例
発信者情報開示請求に関する裁判例では、東京地裁令和1年12月11日の判決で、プロバイダ責任制限法上の「権利侵害の明白性」が認められ、投稿者情報の開示が命じられた事例があります。掲示板やコメント欄での匿名の書き込みであっても、投稿を見た人が本人を特定できる場合には、名誉感情の侵害として扱われる余地があるとされています。
論評・信用毀損罪との境界線を解説
ここで注意したいのは「批判」や「論評」と「侮辱」の境界線です。単なる意見や感想、正当な批判の範囲であれば違法性は認められません。一方、次のようなケースは別の犯罪に該当する可能性もあります。
- 信用毀損罪(刑法233条):虚偽の情報を流して他人の経済的な信用を傷つけた場合
- 業務妨害罪(刑法233条・234条):虚偽の風評やSNS投稿で業務を妨害した場合
「あの店の料理はまずい」という感想は論評の範囲にとどまりやすいですが、「あの店は食材を偽装している」といった虚偽の事実を示せば、名誉毀損罪や信用毀損罪に発展する可能性があります。表現の自由と権利侵害のバランスは、個別の事情によって判断が分かれる難しい領域です。
侮辱罪で訴えるにはどんな証拠が必要か|保存と作成の手順
ここからが本題です。侮辱罪で訴えるためには、どんな証拠をどう残しておけばいいのか、具体的に見ていきましょう。
スクリーンショット・URL・タイムスタンプ等の証拠作成方法
誹謗中傷の証拠保全でもっとも基本となるのがスクリーンショットです。投稿の内容、投稿者のアカウント名、投稿日時、投稿されたURLがすべて分かるように撮影・保存することが大切です。
証拠として押さえておきたい項目をチェックリストにまとめました。
| 項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 投稿内容 | 侮辱にあたる文章・画像全体 | 会話の前後の文脈も含めて撮影する |
| URL | 投稿ページのアドレス | ブラウザのアドレスバーが写るように撮影 |
| タイムスタンプ | 投稿日時 | 画面上の日時表示も一緒に記録する |
| アカウント情報 | ユーザー名・IDなど | プロフィールページも別途保存する |
| 拡散状況 | リツイート数・コメント数など | 被害の大きさを示す資料になる |
スマホの標準スクリーンショット機能でも問題ありませんが、後から「改ざんされていないか」を疑われないよう、可能であれば日時が自動記録されるツールや、専門業者による証拠化(Web上の証拠を公的に記録するサービス)を利用すると安心感が高まります。
証拠がない・投稿が削除されたときのリカバリー策
「気づいたら投稿が消えていた」というケースも少なくありません。この場合でも、まだ打つ手がないわけではありません。
- 検索エンジンのキャッシュやWebアーカイブサービスに投稿の記録が残っていないか確認する
- 投稿を見た第三者がスクリーンショットを保存していないか確認する
- SNS運営会社に対して、削除された投稿のログ保存を依頼する(早めの対応が鍵になります)
- 投稿が削除されていても、削除された時点から公訴時効が進行するとした裁判例もあるため、削除後でも時効にかかっていない可能性がある
大阪高裁の判決(平成16年4月22日)では、ネット上の書き込みについて、投稿が削除された時点から公訴時効の期間を数えるという考え方が示されています。つまり、2022年の改正前に投稿されたものであっても、削除されていなければ時効が完成していない可能性がある点は覚えておきたいポイントです。
プロバイダへのログ保存依頼と発信者情報開示請求の流れ
匿名の投稿者を特定するには「発信者情報開示請求」という手続きを使います。大まかな流れは次のとおりです。
- 証拠保全:投稿のURL・内容・日時が分かるスクリーンショットを保存する
- コンテンツプロバイダ(SNS運営会社など)へIPアドレスとタイムスタンプの開示を請求する
- 開示されたIPアドレスから、投稿者が契約している接続プロバイダ(携帯キャリアや光回線事業者)を特定する
- 接続プロバイダに対して、契約者の氏名・住所・電話番号などの開示を請求する
サイト運営者が任意で開示に応じることは稀なため、通常は裁判所への「発信者情報開示命令」の申立てを行う必要があります。この手続きは複雑で専門知識が必要なため、弁護士に依頼するケースが多いです。
告訴状提出前の準備チェックリスト
告訴状を警察に提出する前に、以下の項目を確認しておくとスムーズです。
- 侮辱にあたる投稿のスクリーンショット(URL・日時入り)が揃っているか
- 投稿者を特定できているか(できていない場合は開示請求を先に検討)
- 告訴期間(犯人を知った日から6か月)を過ぎていないか確認したか
- 告訴状の作成を弁護士や司法書士に依頼するかどうか検討したか
- 警察の担当窓口(生活安全課やサイバー犯罪対策課など)を事前に確認したか
証拠が不十分なまま告訴状を提出しても受理されないことがあるため、事前の準備が非常に重要です。
インターネット上の侮辱への対処法|削除請求と法的措置
刑事告訴だけでなく、投稿そのものを消してしまう「削除請求」という選択肢もあります。実務的にはこちらを先に検討するケースも多いです。
プロバイダ責任制限法に基づく削除請求の手続き
プロバイダ責任制限法(正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)では、権利が侵害されたことが明らかな場合、プロバイダに削除を求めることができます。
削除請求のガイドラインでは、請求者本人であることを確認できる資料や、権利侵害を証する資料などを添えて、プロバイダに請求書を提出する手続きが定められています。
SNS運営会社・掲示板管理者への申立て方法と書式
多くのSNS運営会社や掲示板は、独自の削除申請フォームを用意しています。一般的な流れは以下のとおりです。
- 各サービスの「通報」機能や削除申請フォームから該当の投稿を報告する
- 権利侵害の内容(侮辱・名誉毀損など)を具体的に記載する
- 本人確認資料の提出を求められる場合がある
- 任意の削除に応じない場合は、送信防止措置依頼書(プロバイダ責任制限法に基づく書式)を郵送する方法もある
任意での削除に応じてもらえない場合は、裁判所を通じた仮処分(削除の仮の措置を命じる手続き)を検討することになります。
弁護士に依頼するメリット・費用相場と法律相談の活用
自分で手続きを進めることも可能ですが、発信者情報開示請求や告訴状の作成は法的な専門知識が必要な場面が多く、弁護士に依頼することで手続きがスムーズになるケースが多いです。費用の目安を表にまとめました。
| 依頼内容 | 費用相場 | 備考 |
|---|---|---|
| 刑事告訴(告訴状作成〜受理) | 着手金10万〜30万円、報酬金10万〜30万円程度 | 示談成立時は経済的利益の10〜20%程度になることもある |
| 刑事告訴(着手金一律の事務所) | 33万〜55万円程度 | 証拠整理・捜査機関との協議を含む場合 |
| 発信者情報開示請求から刑事告訴まで一括依頼 | 数十万円〜100万円以上 | 特定費用を含めるとさらに高くなる場合がある |
| 告訴状のみ司法書士・行政書士に依頼 | 数万円程度 | 対応可能な業務範囲は限られる |
弁護士費用は決して安くはありませんが、多くの弁護士事務所が初回無料相談を実施しています。まずは無料相談を利用して、自分のケースでどの程度の費用と時間がかかるのか見積もりを取ることをおすすめします。
損害賠償請求・民事訴訟を同時に進める条件と方法
刑事告訴と並行して、民法上の不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求(民事訴訟)を進めることも可能です。刑事と民事は別の手続きなので、告訴が受理されなくても民事で慰謝料を請求できるケースもあります。
慰謝料の相場は投稿の内容や拡散状況によって大きく異なりますが、単なる悪口である侮辱の場合は数万円から30万円程度、事実を摘示する名誉毀損の場合は10万円から100万円程度が一般的な目安とされています。ただし被害が深刻な場合や、被害者の社会的地位が高い場合には、50万円から200万円程度になるケースも報告されています。
刑事告訴から民事請求までの流れ|警察・検察・裁判所の役割
実際に告訴を進める場合、どんな順序で手続きが進むのか、全体像を確認しておきましょう。
告訴状提出から受理・捜査・起訴までの手順
刑事告訴の一般的な流れは次のようになります。
- 証拠を整理し、告訴状を作成する
- 警察署(生活安全課やサイバー犯罪対策課など)に告訴状を提出する
- 警察が告訴状を受理するかどうかを判断する(証拠不十分な場合は受理されないこともある)
- 受理後、警察が捜査を行い、必要に応じて投稿者を特定する
- 捜査結果を検察官に送致し、検察官が起訴・不起訴を判断する
- 起訴された場合は裁判所で審理が行われ、判決が下される
告訴状を提出しても、必ず受理されるとは限りません。証拠が不十分だったり、告訴期間(犯人を知った日から6か月)を過ぎていたりすると、受理を見送られることがあります。
有罪判決で科される刑罰と前科のリスク・相場
2022年の改正により、侮辱罪の法定刑は「1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料」に強化されました。実際の量刑は事案の悪質性や前科の有無によって異なりますが、初犯かつ示談が成立している場合は、拘留や科料といった比較的軽い処分にとどまるケースも多いとされています。
なお、拘禁刑や罰金刑を含む有罪判決を受けると、いわゆる「前科」がつきます。前科がつくと就職や資格取得などに影響が出る可能性があるため、加害者側にとっては非常にリスクの大きい問題です。
民事で慰謝料・損害賠償を請求する手続き(民法上の不法行為)
刑事責任とは別に、民法709条の不法行為責任に基づいて損害賠償(慰謝料)を請求することができます。手続きの流れは次のとおりです。
- 内容証明郵便などで加害者に損害賠償を請求する(示談交渉の第一歩)
- 交渉がまとまらない場合は、民事訴訟を提起する
- 裁判所が権利侵害の有無や損害額を判断し、判決を下す
発信者情報開示請求にかかった弁護士費用やプロバイダへの手数料も、権利侵害と相当因果関係のある損害として認められる傾向がありますが、全額が無条件で認められるわけではなく、裁判所が「相当」と判断する範囲に限られます。
示談交渉のポイントと相手への連絡・交渉方法
刑事事件化する前、あるいは裁判に進む前に、示談で解決するケースも多くあります。示談交渉で押さえておきたいポイントは以下のとおりです。
- 示談書には「損害賠償金額」「支払い方法」「宥恕(被害者が処罰を望まない意思)の有無」「口外禁止条項」などを明記する
- 示談交渉は直接連絡せず、弁護士を通すことで冷静かつ適正な交渉が進めやすくなる
- 示談金の相場は事案によって大きく異なるため、複数の目安を参考にしながら交渉する
侮辱罪の示談金の相場は、一般的な悪口のケースで5万円から30万円程度、事実摘示を伴う悪質なケースでは30万円から200万円程度になることもあるとされています。示談が成立すれば、刑事事件では不起訴処分につながりやすくなるというメリットがあります。
逮捕を含む刑事事件化の可能性と警察への相談タイミング
侮辱罪での逮捕は、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合に限られ、必ずしも逮捕に至るわけではありません。ただし、2022年の厳罰化によって拘禁刑が科される可能性が生じたことで、以前よりも逮捕の可能性が高まったとされています。
警察に相談するタイミングとしては、次のような場合が挙げられます。
- 悪質な誹謗中傷が繰り返され、被害が拡大している
- 投稿者が特定できず、警察の捜査権限を使いたい
- 生命・身体への危害を感じさせる内容(脅迫的な要素)が含まれている
早期に相談することで、証拠が消える前に対応してもらえる可能性が高まります。
侮辱罪で訴えられた加害者側の対処法|謝罪・示談・棄損回避
ここまでは被害者側の視点で解説してきましたが、逆に「自分が訴えられるかもしれない」という立場の方に向けた対処法も見ておきましょう。
逮捕を避ける初動対応と弁護士への緊急依頼ガイド
投稿から時間が経っていない段階で警察から連絡があった場合、以下の初動対応が重要です。
- 該当の投稿を削除する(ただし削除だけで責任が消えるわけではない点に注意)
- 事実関係を整理し、弁護士に早急に相談する
- 感情的な言い訳や被害者への直接接触は避ける(かえって不利になる可能性がある)
弁護士が早期に介入することで、被害者との示談交渉を進め、逮捕や起訴を回避できる可能性が高まります。
加害者が負う民事・刑事責任と不起訴を目指すポイント
加害者が負う責任は、刑事責任(懲役・罰金など)と民事責任(損害賠償)の2つに分けられます。不起訴を目指すためのポイントとしては次のようなものが挙げられます。
- 被害者との示談を早期に成立させ、宥恕(処罰を望まない意思)を得る
- 反省文や謝罪文を提出し、再犯防止の姿勢を示す
- 前科・前歴がない場合はそれを主張材料にする
示談が成立していれば、検察官が不起訴処分(起訴猶予)を選択する可能性が高まるとされています。
示談金・損害賠償の相場と支払い方法を解説
示談金の支払い方法は、一括での銀行振込が一般的です。相場については前述のとおり事案によって幅がありますが、単なる悪口レベルの侮辱であれば数万円から30万円程度、悪質性が高い場合や被害者の地位が高い場合は50万円以上になることもあります。
支払いが難しい場合は、分割払いの相談や、弁護士を通じた減額交渉を行うことも可能です。示談書には支払い期日や方法を明記し、後のトラブルを防ぐことが大切です。
裁判になった場合の費用・手続き・前科リスク
示談が成立せず起訴された場合、裁判での対応が必要になります。裁判になった場合に考えておきたいポイントは以下のとおりです。
- 弁護士費用(着手金・報酬金)が別途発生する
- 有罪判決が確定すると前科がつき、罰金刑であっても前科として記録される
- 執行猶予がつくかどうかは、初犯かどうかや示談の有無などが影響する
裁判に進む前の示談成立が、加害者側にとって最も負担の少ない解決方法であることが多いです。
時効・条件・リスクQ&A|侮辱罪に関するよくある質問
最後に、侮辱罪に関してよく聞かれる質問をQ&A形式でまとめます。
公訴時効と民事時効の違い・起算点を徹底解説
公訴時効と告訴期間は別の制度なので、混同しないよう注意しましょう。
| 制度 | 期間 | 起算点 |
|---|---|---|
| 告訴期間(親告罪) | 犯人を知った日から6か月 | 犯人を特定した日(開示請求で判明した日など) |
| 公訴時効 | 3年(2022年改正で1年から延長) | 侮辱行為が終了した時点(ネット投稿は削除時点) |
| 民事の消滅時効 | 損害及び加害者を知った時から3年(民法724条) | 被害者が損害と加害者を知った時点 |
ネット上の投稿については、投稿が削除された時点から公訴時効が進行するという裁判例(大阪高裁平成16年4月22日)があるため、投稿が残っている限り時効が完成していない可能性がある点は重要です。告訴期間(6か月)と公訴時効(3年)はどちらか一方でも過ぎると刑事責任を問えなくなるため、早めの行動が欠かせません。
証拠保管はいつまで必要?保存期間と判断の目安
証拠の保管期間について法律上の明確な定めはありませんが、以下を目安に考えるとよいでしょう。
- 告訴期間(6か月)と公訴時効(3年)が経過するまでは保管しておく
- 民事の損害賠償請求も検討している場合は、消滅時効(3年)が経過するまで保管する
- 発信者情報開示請求を利用する場合、プロバイダのログ保存期間(数か月程度が多い)も踏まえ、できるだけ早く動く
投稿を見つけた時点で早急にスクリーンショットを取り、外部ストレージなどにバックアップしておくことをおすすめします。
社員・投稿者が企業名を巻き込んだ場合の企業責任
社員が個人のSNSアカウントで誹謗中傷を行い、それが会社名や所属と一緒に拡散された場合、企業のレピュテーションにも影響が及ぶ可能性があります。企業としては次のような対応が求められます。
- 社内規定に基づき、事実確認と必要な懲戒対応を検討する
- 会社として謝罪や説明が必要な場合は、広報部門と連携して対応する
- 被害者から企業に対して使用者責任(民法715条)を問われる可能性もあるため、法務部門で早期にリスクを評価する
企業が誹謗中傷の被害者になる場合も、法人としての名誉毀損の慰謝料相場は個人よりも高くなる傾向があります。
法律事務所へ無料相談できるオンライン・全国エリア一覧
多くの法律事務所が、誹謗中傷や侮辱罪に関する初回無料相談を実施しています。相談窓口を選ぶ際は、次のポイントを確認するとよいでしょう。
- ネット誹謗中傷や発信者情報開示請求の実績があるか
- オンライン相談(電話・ビデオ通話)に対応しているか
- 着手金・報酬金の料金体系が明確に提示されているか
- 対応エリアが自分の居住地に対応しているか(全国対応の事務所も増えています)
まずは無料相談を活用し、自分のケースでどのような対応が可能か、費用感も含めて確認することから始めてみてください。
まとめ|侮辱トラブルを防ぎ適切な法的措置を取るには
侮辱罪は「事実の摘示がない悪口」を対象とする犯罪で、親告罪であるため被害者自身の告訴が欠かせません。証拠の保全とスピード感のある対応が、訴える側・訴えられた側どちらにとっても結果を大きく左右します。
訴える側・訴えられた側が守るべき5つの手順
最後に、これまでの内容を踏まえた行動のポイントを整理します。
- 投稿を見つけたら、URL・日時・内容が分かる形でスクリーンショットを保存する
- 投稿が削除される前に、プロバイダへのログ保存依頼や発信者情報開示請求を検討する
- 告訴期間(6か月)と公訴時効(3年)を意識し、早めに弁護士や警察へ相談する
- 示談交渉は弁護士を通して進め、感情的なやりとりを避ける
- 訴えられた側は速やかに弁護士に相談し、示談による早期解決を目指す
ネットリテラシーを高め再発を防ぐチェックポイント
トラブルを未然に防ぐためには、日頃からのネットリテラシーも大切です。
- 感情的になった投稿はいったん保存し、時間を置いてから見直す習慣をつける
- 「事実」と「感想・悪口」を混同した投稿は、法的リスクが高いことを意識する
- 相手が特定できる形での批判・非難は慎重に行う
- SNSの利用規約や各サービスの通報機能の仕組みを理解しておく
侮辱罪をめぐるトラブルは、ネット社会が広がるほど誰にとっても身近な問題になっています。万が一トラブルに巻き込まれたときは、この記事で紹介したポイントを参考に、早めの証拠保全と専門家への相談を心がけてください。
