盗撮被害の慰謝料・示談金は、法律で決まった金額がありません。実際には10万〜50万円前後で話がまとまるケースが多いと言われていますが、事案しだいで10万円以下にも100万円超にもなります。この記事では、金額の決まり方と、損をしないために集めておきたい記録を、できるだけやさしく整理しました。
なお、金額はどれも各法律事務所が公表している「目安」です。実際の判断は、早めに弁護士へ相談してください。
盗撮被害における慰謝料と示談金の違い
盗撮被害者が請求できる主な損害項目
被害者が加害者に求められるのは、主に次の損害です。
- 精神的苦痛に対する慰謝料
- 診察・カウンセリングの費用(通院費を含む)
- スマホやカメラなどを調べたり、買い替えたりした費用
- 引っ越しや防犯対策にかかった費用(個別の事情で認められる場合)
最後の項目は、認められるかどうかが事案ごとに変わります。領収書は必ず残しておきましょう。
慰謝料と弁償費用の内訳
慰謝料は「心の傷」に対するお金です。弁償費用は、実際に出費した「実費」です。
| 項目 | 内容 | 必要な資料 |
|---|---|---|
| 慰謝料 | 恐怖・不安・羞恥心などへの賠償 | 診断書、被害状況のメモ |
| 治療費・通院費 | 心療内科などの費用 | 領収書、診療明細 |
| 物的損害 | 衣類・持ち物の損害など | 領収書、写真 |
示談金=慰謝料+α?事件処理の視点で解説
示談金とは、加害者が被害者に謝罪し、支払いなどを話し合って合意するお金のことです。実務では慰謝料に実費などを含めた全体を「示談金」と呼ぶことが多く、その意味で「慰謝料+α」と考えて大丈夫です。
注意したいのは、罰金との違いです。罰金は国に納めるお金で、被害者には入りません。罰金額と慰謝料に直接の関連はありません。
慰謝料・示談金はいくら?金額相場を決める7大判断要素
精神的慰謝の程度と被害者の属性
恐怖で外出できなくなった、眠れない、通院が必要になったなど、被害が重いほど金額は上がりやすくなります。被害者が未成年の場合は、成人より高くなるケースが多いとされます。
撮影範囲・公開有無など行為態様の評価
判断要素は、次の7つで整理すると分かりやすいです。
- 精神的苦痛の程度
- 被害者の属性(年齢など)
- 撮影場所や方法の悪質性
- 撮影の回数・期間、被害者の人数
- 画像・動画の拡散や公開の有無
- 加害者の資力・前科
- 刑事手続きの進み具合
盗撮の場所、撮影の態様、被害者の人数などで金額が変わる点は、複数の事務所が指摘しています。拡散された場合は、特に高額になりやすいと考えられます。
加害者の資力・前科の有無で変わる上限
加害者に支払う力がなければ、請求額が高くても現実には回収できません。一方で、同種の前科がある場合は、加害者側が示談を強く望むため、高めの金額でまとまることもあります。
刑事手続き進行度と不起訴になる可能性
示談が成立すると、逮捕の回避や早期釈放、不起訴処分につながる可能性が高まります。加害者側は起訴前に示談を急ぎがちです。ただし、金額が上がるとは限りません。冷静に条件を確認しましょう。
最新の示談金相場データと具体的金額帯
各事務所の公表値は次のとおりです。
| 情報源の種類 | 示談金の目安 |
|---|---|
| 弁護士法人(2024年公開) | 10万〜50万円 |
| 別の法律事務所(2024年公開) | 約30万円(10万〜50万円で変動) |
| 刑事弁護の事務所 | 約50万円前後 |
| 弁護士事務所(2026年公開) | 10万〜100万円程度 |
| 弁護士事務所(2026年9月公開) | 10万〜50万円程度が多い |
事務所によって数字に幅があります。「この金額なら必ず通る」という基準ではない点を押さえておいてください。
ケース別の相場:盗撮未遂・覗き・撮影罪の場合
盗撮未遂でも慰謝料請求は可能?判例比較
撮影罪は未遂でも処罰の対象です。未遂の場合は、実際に撮影された場合より低くなる傾向があると考えられます。ただし、恐怖などの精神的被害があれば請求できる余地はあります。具体的な判例の金額は、確認できた範囲では十分な根拠がありませんでした。弁護士に類似事例を確認してもらうのが確実です。
覗き行為の刑事・民事責任を整理
覗きは、刑事面では各都道府県の条例などが問題になり、民事面ではプライバシー侵害として慰謝料請求の対象になり得ます。詳しい適用は事案ごとに違うため、相談時に事実関係を具体的に伝えましょう。
スマホ撮影罪での処罰と示談金目安
2023年7月13日に施行された性的姿態撮影等処罰法は、盗撮を全国一律で処罰する法律です。主な罰則は次のとおりです。
| 罪名 | 刑罰 |
|---|---|
| 性的姿態等撮影罪 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
| 提供等罪 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
| 不特定・多数への提供、公然陳列 | 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金 |
| 保管罪 | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 |
示談金は、前述の10万〜50万円前後が一つの目安です。ただし、撮影罪ならではの専用相場が確立しているとまでは言えません。
慰謝料を最大限回収するための証拠・記録の集め方
早期にやるべき3つの対応チェックリスト
- 警察に被害を届け出る(相談だけでも可)
- 記憶が新しいうちに、日時・場所・状況をメモする
- 画像・メッセージ・防犯映像など、証拠になりそうなものを消さずに保存する
防犯カメラ・LINE履歴などデジタル証拠の確保法
防犯カメラの映像は、保存期間が短いことがあります。施設側に早めに保全を依頼してください。LINEやSNSのやりとりは、スクリーンショットに日時と相手のアカウントが分かる形で残しましょう。元データも削除せず、端末ごと保管するのが安心です。
医師の診断書で精神的被害を可視化する方法
眠れない、外出が怖いなどの症状があれば、心療内科や精神科を受診しましょう。診断書は、精神的被害を客観的に示す資料になります。症状が出た時期と事件との関係を、医師に具体的に伝えることが大切です。
弁護人と共有したい記録テンプレート
| 記録項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 日時・場所 | 年月日、時間帯、場所の詳細 |
| 加害者の特徴 | 服装、持ち物、人相 |
| 被害の状況 | 何をされたか、目撃者の有無 |
| 体調・生活の変化 | 症状、欠勤・欠席の日数 |
| 出費 | 項目、金額、領収書の有無 |
| 警察の対応 | 担当者名、受理番号など |
示談交渉の流れと弁護士への依頼ポイント
加害者側からの示談提案を受けたら最初に確認すること
その場で返事をする必要はありません。まず、相手に弁護士がついているかを確認しましょう。直接会うのは避け、必要なら家族や友人、弁護士を代理人にします。
弁護士が行う示談交渉のステップと期間
一般的な流れは次のとおりです。
- 加害者側の弁護士が、警察・検察を通じて被害者の連絡先を確認する
- 被害者の同意を得たうえで連絡し、条件を調整する
- 合意したら示談書を作成する
期間は事案しだいです。起訴の判断前に進むことが多いため、スピード感が求められる場面もあります。
検察官・警察との連携で刑事事件を有利に進める
示談の意思がない場合でも、被害感情や処罰を望むかどうかを、担当の警察官や検察官にきちんと伝えられます。示談に応じる場合は、条件を弁護士と一緒に整理してから伝えると安心です。
弁護費用と成功報酬の相場を把握する
被害者側の弁護士費用は、事務所ごとに差があります。公開情報で確認できたのは加害者側の例で、総額50万〜200万円ほどとされています。被害者側の相場とは別物なので、依頼するときは、無料相談の有無や費用の見積もりを必ず確認してください。
吊り上げ要求は危険!示談成立を阻むNG対応とリスク
相場以上の吊り上げ要求が生む3つのリスク
相場を大幅に外れた要求は、逆効果になりかねません。想定されるリスクは次の3つです。
- 交渉が決裂し、示談金そのものを受け取れなくなる
- 加害者側が「不当な要求だ」と反発し、対立が長引く
- 要求の仕方によっては、恐喝などの別問題に発展するおそれがある
示談成立を逃さないための交渉術
- 根拠(診断書・領収書)を示して金額を説明する
- 譲れない条件(接触禁止、データ削除など)を先に整理する
- 感情的なやりとりは避け、窓口は弁護士に一本化する
SNS拡散・マスコミ対応の注意点
SNSへの投稿は、名誉毀損や、被害者自身の特定につながる危険があります。投稿したくなる気持ちはあっても、まずは弁護士に相談してください。取材を受ける場合も、事前に相談するのが安心です。
刑事事件での処分と不起訴の可能性:検察官・家族への影響
盗撮事件が刑事事件化するフロー
被害の届け出や現行犯での発覚を経て、警察の捜査、検察への送致、検察官の判断という流れになります。検察官は、不起訴にするか、罰金や公判請求で起訴するかを決めます。
不起訴・起訴の判断基準と被害者参加制度
示談の成立は、不起訴の可能性を高める大きな要素です。成立しない場合は、起訴されて罰金などの刑を受けるおそれがあります。被害者参加制度の対象や条件は事件の種類で異なるため、自分のケースが対象かは弁護士に確認してください。
家族が受ける二次被害とケア方法
被害者の家族も、強いショックや不安を抱えます。責めるような言葉は避け、話を聞くことを優先しましょう。必要なら、家族も一緒にカウンセリングを受けてください。
慰謝料請求を継続するか和解するかの判断軸
| 判断軸 | 示談(和解)向き | 請求継続向き |
|---|---|---|
| 早期の解決 | 重視する | 重視しない |
| 加害者の誠意 | 謝罪や条件に納得できる | 納得できない |
| 刑事処分への希望 | 処罰より回復を優先 | 厳しい処分を望む |
| 回収の見込み | 現実的な額で確実に | 資力に問題がない |
まとめ
盗撮の慰謝料・示談金は、10万〜50万円前後が多いものの、被害の重さや拡散の有無などで大きく変わります。金額を主張するうえでは、診断書、領収書、デジタル証拠、時系列のメモが力になります。吊り上げ要求は避け、弁護士を窓口にして落ち着いて進めましょう。
一人で抱え込まず、まずは警察や弁護士の無料相談を活用してください。
※この記事は一般的な情報です。個別の事案については、弁護士にご相談ください。
