カスハラへの対応について、企業の約3割が特に取り組んでいないと答えた調査を、帝国データバンクが公表しました。調査には、一般のお客さまだけでなく、元請けや取引先との関係で対応に苦慮する企業の声もあります。「仕事を失いたくないから、担当者が我慢するしかない」と感じている方には、気になる内容ではないでしょうか。
会社同士の取引でも、相手の言動でつらい思いをすることはあります。営業上の関係を守りたい気持ちと、働く人を守る必要性がぶつかると、相談そのものが難しくなりがちです。今回は、調査の数字の読み方と、取引先への対応を組織で考える準備を解説します。
取引条件の調整と、従業員が困っている言動への対応を分けることが出発点です。特定の取引先を非難するためではなく、何を確認し、誰に判断を引き継ぐのかを整理していきましょう。
帝国データバンクの企業調査では、カスハラや不当な要求などを直近1年に受けたとの回答が15.3%、対策に特に取り組んでいないとの回答が29.7%でした。元請け・取引先との力関係から対応が難しいという声も紹介されています。全国2万2095社を対象とし、有効回答は1万235社。調査期間は2026年9月14日~30日、方法はインターネット調査です。
出典:帝国データバンク「カスハラ対策、企業の3割は未着手 対応方法に課題 被害企業は15.3%」(2026年10月26日10時00分配信・更新)。同社の原報告も同日公表です。
9月の回答を、現在の法令順守の判定に使わない
今回の調査は、10月1日のカスハラ対策義務化より前に行われています。「取り組みあり」の集計には実施予定も含まれており、発表日の時点で全企業の実施状況を点検した結果ではありません。数字だけで、個別の会社が現在も放置している、法令に違反していると決めつけることは避けたいところです。
厚生労働省は、2026年10月1日から、労働者を雇用する全ての事業主にカスハラ防止措置が義務付けられたと案内しています。参考:厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されました!」。調査で自社の現状を推測するより、相談担当者や対応手順が今どうなっているか、社内で確かめることにつなげましょう。
元請けへの営業連絡と、従業員の相談を分ける
例えば、取引先から担当者の携帯に連絡が続き、納品内容の修正の話と、本人を責める発言が混ざっている場面を考えてみます。これは今回の調査に登場した特定企業の再現ではありません。担当者が「契約の話だから自分で返さないといけない」と感じても、取引条件の返答を決める責任者と、働く人の相談を受ける人を整理する余地があります。
厚生労働省の指針は、取引先の担当者も対象となる「顧客等」に含めています。ただし、正当な申し入れまで全てカスハラになるわけではありません。納期や品質について確認すべき点と、人格を否定する発言や拘束の状況を分け、双方の説明を確認することが必要です。参考:厚生労働省・カスタマーハラスメント防止指針。
営業上の判断をする上司に相談しづらいときは、人事や別の社内窓口、外部の労働相談につながる方法を確認してください。相談を受けた側も、本人が心配していることや、取引先にどこまで伝えてよいかを聞き、必要な範囲で対応を調整することが大切です。
社外に調査を頼む前に、事実と共有範囲を決める
社内記録だけでは経緯が分からず、外部への調査相談を検討する場合も、受注情報や従業員の話を最初から全て送る必要はありません。まず責任者が、次の点を整理してみてください。
- 契約・注文のどの点が争われ、何が合意済みで何が未確認なのか。
- 連絡の頻度や内容について、メールなどで確認できる事実と、伝聞しかない点はどこか。
- 営業上の返答、従業員の保護、追加の事実確認を、それぞれ誰が担当するのか。
- 外部に見せる資料と伏せる情報、共有を承認する人、保管・返却の扱いをどう決めるか。
探偵へ相談する際も、確認したい事実と調査方法、費用、報告の範囲を具体的に確かめましょう。相手担当者の私生活や家族を調べて交渉材料にすること、会社のアカウントへ無断で入ること、情報を公表して圧力をかけることは勧められません。調査は取引停止や法的責任の判断を代行するものではなく、結果も保証できません。
契約上の対応は弁護士へ、暴力や脅迫などの危険は警察へ、相談体制の悩みは労働相談へと、目的を分けてください。切迫した危険には110番を優先し、調査が終わるまで待つ必要はありません。探偵への依頼の有無にかかわらず、職場で働く人を守る対応を進めましょう。
取引先との関係が長いほど、相談をためらうこともあると思います。調査の数字は、自社で相談先を確かめるきっかけにしてください。厚生労働省の案内には、社内で相談できない場合の外部窓口も掲載されています。営業上の課題と従業員の困り事を整理し、必要な支援につながっていきましょう。
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