あいさし

あいさしとは:
団体や組織に属さず、単独で犯罪を実行する者を指す業界の隠語・警察用語。「単独犯」を意味し、他者との連絡や共犯関係を持たないため、行動の予測がつきにくく、独自の警戒心を持っていることが多い。

あいさしのリアル:ある探偵の記録

「今回のマル対は『あいさし(単独犯)』だ。連絡を取り合う仲間がいない分、行動パターンの予測が狂いやすい。油断するな」

張り込み中の車内、私は無線で相棒に指示を出した。今回の依頼は、ある企業の役員から持ち込まれた「横領・背任行為の証拠収集」である。会社の資金が不自然なルートで流出しており、その中心にいるのが、今回マークしている経理部門の幹部だった。彼は組織的な詐欺グループ(やまし)の一員ではなく、たった1人でシステムを悪用し、金を着服し続けている「あいさし」だった。

「群れない悪は、足取りが掴みにくい」

探偵の経験上、組織犯罪よりも「あいさし」の調査の方が、独特の難しさがある。組織的な犯罪であれば、仲間との接触(直調や側調のチャンス)や、電話での通信記録(電調のフック)から芋づる式に実態が見えてくることが多い。しかし、すべての計画を頭の中だけで完結させている単独犯は、他人に相談もしなければ、怪しい連絡もしない。ただひたすらに、孤独で冷徹なルーティンを繰り返すのだ。

男がオフィスビルから出てきた。ビジネスバッグを固く握りしめ、時折、背後を振り返る。誰かと待ち合わせる様子はない。彼は退社後、いくつかの駅を意味もなく経由し、人混みに紛れようとした。共犯者がいない「あいさし」は、すべてのリスクを1人で背負っているため、一般人とは比較にならないほど強烈な防衛本能(警戒心)を持っている。

私たちは「ルース・テイル(緩やかな尾行)」と「クロス・テイル(交互尾行)」を絶妙に使い分け、彼の視界に入らないよう、静かに包囲網を維持した。やがて彼が辿り着いたのは、高級住宅街の一角にあるトランクルームだった。スマホを操作しながら、周囲を激しく見回している。

ガチャリ、と扉が開いた瞬間。私たちの超高倍率カメラが、暗がりの空間を正確に捉えた。そこには、彼が横領した資金で購入したと思われる大量の高級貴金属や、不正な二重帳簿の束が保管されていた。誰にも頼らず、1人で築き上げた秘密の隠れ家(セーフハウス)。彼はバッグから新たな書類を取り出し、そこに収めようとしていた。

「マル対の不正資産の保管場所、および現認写真を確保。裏どり完了です」

私はシャッターを切りながら、静かに勝利を確信した。どんなに孤独に、完璧に隠蔽したつもりでも、彼自身が動くという「行動の事実」までは消せない。たった1人で完全犯罪を企てた「あいさし」の化けの皮が、私たちのレンズによって完全に剥ぎ取られた瞬間だった。

「あいさし(単独犯)」による社内不正を暴くために

単独で実行される「あいさし」の犯罪や横領は、周囲に内通者がいないため、社内監査や通常の目には非常に留まりにくいという特徴があります。本人が「誰にもバレていない」と過信しているケースも多く、放置すれば被害額は膨らむ一方です。プロの探偵による緻密な素行調査と「裏どり」は、本人が密かに行っている不正な足取りや証拠を、誰にも気づかれることなく安全に炙り出し、企業が法的な鉄槌を下すための決定的な材料(要請事実の証明)を提供いたします。