子供の父親が誰であるかを確定させる「認知の訴え(認知訴訟)」において、被告となった男性側が「母親は妊娠可能期間中に、自分以外の男性とも性交渉を持っていた」と主張し、自分が父親であることを否定・反論すること。
不貞の抗弁のリアル:ある探偵の記録
「相手の弁護士、やはり『不貞の抗弁(ふていのこうべん)』を持ち出してきましたか……」
事務所の面談室で、私は依頼人である若い女性と、彼女の代理人である弁護士が持参した裁判資料に目を落としていた。女性はかつて交際していた男性との子供を出産したが、男性は一切の責任を拒否して失踪。やむなく裁判で父親と認めさせる「認知の訴え」を起こしたところ、男性側は『彼女は当時、別の男とも関係を持っていた。だから自分の子供ではない』と、身勝手な主張で反論してきたのだ。これが法律の世界で言う「不貞の抗弁」である。
「人間の言葉はいくらでも嘘をつける。だからこそ、客観的な事実が必要だ」
DNA型鑑定が主流となった現代でも、この不貞の抗弁は男性側の引き延ばし戦術や、女性側の道徳的信用を貶める目的で裁判の場によく現れる。男性側は、女性が当時別の男性と親しげに歩いていた不鮮明な写真や、SNSのやり取りの一部を『証拠』として提出し、裁判を泥沼化させようとしていた。
この卑劣な反論を完璧に打ち砕くため、私たち探偵に課せられた任務は、男性側が主張する「別の男性」とされる人物の正体を突き止め、その主張がいかに根拠のない出鱈目であるかを証明することだった。
私はすぐに班を編成し、男性側が『浮気相手』と主張する男性の「側調(側面調査)」および「直調(直接聞き込み)」を開始した。その男性の生活環境、女性との本当の関係性を洗う。数日間の調査の結果、その男性は女性のただの職場の同僚であり、男性側が主張する時期には別の場所にいたという完璧なアリバイ(行動証明)を確保した。さらに、男性側がその同僚に金を掴ませて虚偽の証言をさせようとしていた決定的な現場の証拠までをもカメラに収めることに成功したのだ。
「これで不貞の抗弁は完全に崩壊します。よくここまで集めてくれました」
弁護士は私たちの報告書を見て力強く頷いた。裁判の席で、ぐうの音も出ない裏付け証拠を突きつけられた男性は、それ以上嘘を突き通すことはできなかった。子供の未来と、母親としての尊厳が守られた瞬間だった。
法律の壁を打ち破る、探偵の「反証の技術」
「不貞の抗弁」は、認知訴訟だけでなく、離婚裁判や慰謝料請求の場でも、有責配偶者側が自らの罪を逃れるために悪用されるケースが多々あります。相手がどれほど巧妙な嘘の主張を展開してきても、法律の場では「証拠」がすべてです。プロの探偵による緻密な事実調査は、相手の理不尽な抗弁を無力化し、裁判を依頼人にとって圧倒的有利な展開へと導くための必要不可欠な武器となるのです。