勤割り(きんわり)

勤割り(きんわり)とは:
調査対象者(マル対)や浮気相手(二対)が、実際に働いている「勤務先(会社・店舗など)」を特定・割り出す調査のこと。「勤務先割り出し」を略した探偵業界の専門用語。

勤割りのリアル:ある探偵の記録

平日の午前7時。通勤ラッシュが始まり、駅へと向かう人々の足取りが早くなる。私は対象者の自宅から少し離れた死角に身を潜め、その瞬間を待っていた。今日のミッションは、まだどこで働いているか判明していない対象者の職場を特定する調査、業界で言うところの「勤割り(きんわり)」だ。

「勤割りを制する者は、調査を制する」

そう言われるほど、この調査は重要であり、同時に高い尾行技術が求められる。なぜなら、朝の通勤時間帯は人混みが激しく、対象者の動きも直線的で早い。改札の通過、電車の乗り換え、満員電車での乗車……。一瞬でも目を離せば、混雑する駅のホームで見失ってしまう(失尾する)リスクが非常に高いからだ。私たちは緊張感を持って、対象者の背中を視野に収め続けた。

対象者は複数の路線を乗り継ぎ、都心のビジネス街にある大きな駅で下車した。駅から出ると、数多のサラリーマンが同じようなスーツを着て同じ方向へと歩いていく。ここからが勤割りの本当の勝負だ。対象者がどのオフィスビルに入っていくのか、見失わないように距離を詰める。

対象者はガラス張りの高層ビルのエントランスへと吸い込まれていった。しかし、ビルを特定しただけでは「勤割り完了」とは言えない。数十もの企業がテナントとして入っている大型ビルの場合、その中の『どの会社』に入ったのかまでを突き止める必要があるからだ。

私は一般のビジネスマンを装い、対象者と時間差でセキュリティゲート付近へと進んだ。対象者がポケットから社員証を取り出し、ゲートにかざす。その瞬間、カードに印字された企業のロゴマークと、彼が向かったエレベーターの階数を私の網膜に焼き付けた。さらに別の調査員が、そのフロアでの受付や出入りの様子を確認する。これで、対象者が間違いなくその企業の社員であるという裏付けが取れた。

「マル対の勤割り完了。○○株式会社の本社ビルです」

インカムに報告を入れながら、私は静かにビルを後にした。依頼人が抱えていた「相手がどこで何をしているか分からない」という不気味な空白が、確かな事実に変わった瞬間だった。

なぜ「勤割り」が重要なのか?解決に必要な社会的信用

探偵が「勤割り」を行う理由は、単に対象者のスケジュールを把握するためだけではありません。不倫の慰謝料請求や金銭トラブルなどで法的措置(裁判や給与の差し押さえなど)をとる際、相手の「勤務先」が判明していることは法律上、極めて大きなアドバンテージになります。相手が社会的にどこの組織に属しているかを証明することは、依頼人が正当な権利を主張するための、最も強固な土台となるのです。