調査対象者(マル対)や浮気相手(二対)の「自宅(居住地)」を特定・割り出す調査のこと。探偵業界では古くから「ヤサ割り(家割り)」とも呼ばれ、身元特定において最も基本かつ重要な調査手法。
宅割りのリアル:ある探偵の記録
「マル対と二対、先ほど改札内で別れました。これより二対の『宅割り(たくわり)』に移行します」
金曜日の深夜11時半。週末の賑わいが残る郊外の駅で、私は電車から降りてきた一人の女性の後を追った。彼女は、今回の浮気調査で判明した夫の不倫相手(二対)だ。これまでデートの現場やホテルの出入りは押さえたが、彼女が一体どこの誰なのか、どこに住んでいるのかはまだ分かっていない。今日の目的は、彼女の自宅を完全に特定する、いわゆる「ヤサ割り」である。
「家を突き止めるまで、絶対に気を抜くな」
先輩探偵から叩き込まれた言葉が頭をよぎる。宅割りは、一見するとただ後ろをついていくだけの単純な尾行に思えるが、実は調査の全工程の中で最も「発覚(バレるリスク)」が高い。なぜなら、目的地が近づくにつれて人通りが減り、静かな住宅街へと入っていくからだ。夜の静寂の中、ヒールの音だけが響くような夜道では、少しでも距離が近ければ足音や気配で気づかれてしまう。かといって離れすぎれば、曲がり角やマンションの影で見失ってしまう(失尾する)。
女性が駅から徒歩15分ほどの、閑静な住宅街へと足を踏み入れた。私は追跡のフォーメーションを変え、彼女の直線上に位置を取るのをやめた。あえて並行する一本隣の道を歩き、角ごとに彼女の生存を確認する「並行尾行」や、スマートフォンの画面に集中する夜間帰宅の会社員を装うなど、周囲の風景に完全に同化する。
やがて、彼女はある3階建てのマンションの前で足を止めた。バッグから鍵を取り出し、オートロックの扉を開けて中へ入っていく。しかし、ここで調査終了ではない。マンションの建物を特定しただけでは、宅割りが完了したとは言えないのだ。集合住宅の場合、『何号室』に住んでいるかまでを突き止めるのがプロの仕事である。
私は数分後、不自然にならないタイミングでマンションのエントランスへ近づいた。外から建物の窓を見上げる。数分前まで真っ暗だった3階の角部屋に、パッと明かりが灯った。さらに、ポストのネームプレートを確認し、依頼人から提示されていた情報や彼女のファーストネームと一致することを確認する。
「二対の宅割り完了。○○マンションの302号室です」
静かに現場を離れながら、私は安堵の息を漏らした。これで言い逃れのできない『不倫相手の身元』が、完全に確定したのだ。
宅割り(ヤサ割り)がもたらす、決定的な解決力
浮気調査や各種トラブルにおいて、相手の「自宅住所」を特定することは、すべての法的続きの出発点となります。言い逃れをする不倫相手に対して、言い訳の余地を与えずに内容証明郵便を送りつけたり、慰謝料請求の訴状を届けたりするためには、正確な居住地の把握が絶対に欠かせません。「宅割り」によって得られた住所は、依頼人が泣き寝入りせず、自らの権利と未来を守るための確固たる足がかりとなるのです。