人を騙して金品を巻き上げたり、架空の投資話などを持ちかけたりする「詐欺師」を指す業界の隠語・警察用語。「山師(投機的な事業で一攫千金を狙う者)」が転じて、不正な手段で人を欺く者を指すようになった。
やましのリアル:ある探偵の記録
「今回のマル対は、典型的な『やまし(詐欺師)』だ。絶対にこちらの素性を悟られるな」
平日の午後1時、都心の高級ホテルのラウンジ。私はビジネスマンを装い、数つ隣のテーブルに座る男に視線を走らせた。男は仕立ての良いスーツを完璧に着こなし、身振りを交えて熱弁を振るっている。対面に座る初老の男性は、男の言葉を信じ切った様子で深く頷いていた。あの男こそが、今回の調査対象であり、依頼人から大金を騙し取った疑いのある『やまし』である。
探偵の仕事において、浮気調査と並んで多いのが、こうした詐欺被害に伴う所在特定や証拠収集だ。業界で「やまし」と呼ばれる彼らは、驚くほど弁が立ち、人当たりが良い。一見すると信頼できるエリート実業家にしか見えないのが、彼らの最大の武器だ。人の心理の隙を突き、言葉巧みに「絶対に儲かる話」を信じ込ませる。しかし、その正体は偽名と偽りの経歴で塗り固められた虚像に過ぎない。
「やまし」の調査は、通常の尾行よりも遥かに難易度が高い。なぜなら、彼ら自身が常に「誰かに追われるリスク」を自覚しているため、一般人とは比較にならないほど警戒心が強いからだ。移動時には急にタクシーを拾ったり、意味もなくホテルの出口を何度も出入りして追っ手を撒こうとする。少しでも不審な気配を察知すれば、また新しい偽名を使って別の街へと雲隠れしてしまう。
男がラウンジを立ち、足早に歩き出した。私は適度な距離を保ちながら、スマホを見るふりをして後を追う。彼が向かったのは、高級マンションの一室だった。しかし、そこが本拠地とは限らない。やましは複数の「セーフハウス(隠れ家)」や偽装オフィスを使い分けるのが常套手段だからだ。
私は相棒と連携し、男がその建物から誰と出入りし、どんな車を使っているのか、言い逃れのできない映像を次々と記録していった。彼らがどれほど巧妙に嘘の仮面を被ろうとも、その足取りという『客観的な事実』までを偽装することはできない。警察に被害届を出すため、あるいは裁判で全額を回収するため、私たちは「やまし」の化けの皮を1枚ずつ剥ぎ取っていく。
「やまし」の嘘を暴き、被害者を救うための第一歩
「やまし(詐欺師)」は、被害者の善意や焦りを利用して容赦なく財産を奪い去ります。万が一トラブルに巻き込まれてしまった場合、相手が組織的に動いているケースも多いため、個人で証拠を集めようとすると逆上されたり証拠隠滅を諮られたりする危険があります。プロの探偵による緻密な調査で、相手の本当の居住地や勤務先、実態を明らかにすることこそが、大切な資産を取り戻し、法的な裁きを与えるための最も確実な防衛策となるのです。