要請事実(ようせいじじつ)

要請事実(ようせいじじつ)とは:
裁判において、判決を下すために法律上「立証(証明)することが必要とされる事実」のこと。当事者間で主張が食い違い争いがある事実や、法律上の要件を満たすために証明しなければならない具体的な事実(不貞行為の存在など)を指す。

要請事実のリアル:ある探偵の記録

「今回の裁判における最大の『要請事実(ようせいじじつ)』は、不倫相手が『既婚者だと知っていたかどうか』です。ここを完全に立証してください」

弁護士事務所の打ち合わせ室で、私は弁護士からそう告げられた。依頼人の女性は、夫の浮気相手(二対)に対して慰謝料請求の裁判を起こした。しかし相手側は、提出された答弁書の中で『私は彼が独身だと聞いていた。既婚者だとは知らなかったから責任はない』と主張してきたのだ。法律上、相手に過失がなければ慰謝料は認められない。つまり、今回の裁判で最も証明が必要な事実――「要請事実」は、不倫相手の『故意・過失の有無』に絞られた。

「裁判官が求めている事実を、ピンポイントで撃ち抜く」

それがプロの証拠集めだ。ただ闇雲に「二人が仲良く歩いている写真」を何百枚集めたところで、今回の要請事実である『既婚者だと知っていた証拠』にはならない。裁判という戦場では、その事件の法律上の争点(要請事実)を完璧に証明できる証拠だけが、価値ある武器として認められるのだ。

私たちはすぐにターゲットを絞り、二人の過去の行動データや、浮気相手の周辺への「側調(側面調査)」を徹底的に行った。そして、本調査の日に決定的な瞬間が訪れる。

平日の夕方、夫と不倫相手がカフェで合流した。私たちは適切な距離から、集音マイクとビデオカメラを起動させる。会話の中で、不倫相手が口にした。「そういえば、奥さんとの離婚の話、どこまで進んだの?」「来月の娘さんの運動会、あなたも行くんでしょ?」

彼女の口から明確に飛び出した、夫に『妻(奥さん)』や『娘』がいることを前提とした言葉の数々。これこそが、彼女が既婚者であることを完全に認識していたという、何よりも雄弁な要請事実の立証の瞬間だった。

「素晴らしい。この会話データと映像があれば、相手の『知らなかった』という嘘は100%通用しません。要請事実にこれ以上ない回答が出せました」

弁護士は私たちの報告書を手に、勝利を確信したように深く頷いた。法廷の暗闇を照らし、裁判官が求める『真実の輪郭』をクリアに描き出すこと。それこそが、要請事実に向き合う探偵の使命なのだ。

法廷の勝敗を分ける、探偵の「立証能力」

裁判における「要請事実」は、法律の要件を満たすための絶対条件です。不倫裁判であれば「肉体関係(不貞行為)があったこと」や「既婚者と知っていたこと」がこれに該当します。探偵が作成する調査報告書が裁判で強い力を発揮するのは、ただの日常記録ではなく、この法律上の「要請事実」を直接、かつ客観的に証明できるように設計されているからです。プロの緻密な目線が集めた証拠こそが、不条理な裁判を勝ち抜くための唯一の鍵となります。